「アクションヒロイン チアフルーツ」の第1話を斬るッ!【2017夏アニメ】
2話感想書きました!
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さて、今期アニメの覇権候補として名高い「アクションヒロイン チアフルーツ」だが、今回は第一話を詳しく振り返りその魅力を考える。
ネタバレ等含むので未視聴の方はご注意ください。
制作情報
- ディオメディア制作によるTVアニメ。 2017年7月よりTBS、BS-TBSほかにて放送予定。スタッフ監督:草川啓造シリーズ構成:荒川稔久キャラクターデザイン:井出直美美術監督:松下佳香美術設定:高橋麻穂色彩設計:林由稀撮影監督:伊藤康行編集:小島俊彦音楽.. 続きを読む
- アクションヒロイン チアフルーツ|TBSテレビ www.tbs.co.jp
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まず第一話考察の前にスタッフ等を見てみよう。
監督の「草川啓造」は、なのは人気に火をつけた名作「魔法少女リリカルなのはA's」で初監督をした人物だ。一期でも演出をやっていたが初監督であの出来は素晴らしい。
あの「アニメ艦これ」の監督でもあるが、それ以外に輩出してる有名作も数多く、わりと実力のある監督だ。
そして今期のアホガールの総監督でもある。作風に個性があるという感じはあまりないが、無難にB級ものを作れる、ほのぼのしたギャグ演出は安定している。
そして構成の「荒川稔久」は「ヒロインものの名手」と言われる有名脚本家で、また「仮面ライダークウガ」「特捜戦隊デカレンジャー」「海賊戦隊ゴーカイジャー」などの特撮のライターも行っている超ベテランである。
なんとスーパー戦隊シリーズ最多、全41作中18作品に参加している。「アクティヴレイド -機動強襲室第八係-」などでも特撮の作風を感じた。
制作はディオメディア。イカ娘などが代表作にある。たまに作画崩壊も起こすがガーリッシュナンバー程度に作画を持たせることができれば問題ないだろう。
第一話のおさらい・解説
それでは第一話を見ていこう。
ファーストシーン
まず突然「ご当地ヒロインレビューランク10」の発表が始まる。唐突なスタートだ。
だが次のカットでは、音声とBGMにエフェクトがかかり、これがテレビの音声だと分かる。
続いてテレビを見るキャラクターたち。王道の導入だ。
しかし再びテレビ内の内容に戻ると、先ほどのテレビエフェクトはなく、臨場感のあるステージの様子がそのまま描かれる。テレビに入り込んだ様な演出。
テレビの中の世界が、主人公たちの日常とつながることを示唆する伏線になっている。
熱中する幼い子供と姉の姉妹。
このヒロイン、カミダイオーのステージを明日見に行き、絵をプレゼントするというが…画面内のセリフでは「残念だが明日は来ない!」。
ショーが進む中、苦戦するヒロインに届けられるのがこの地元名産商品。この作品のご当地活性化というテーマ。そして別の少女が映る。
ショーの最後、決めポーズを真似する妹と熱中する少女。出会いの伏線だろう。
そしていきなり先ほどのヒロインの特撮風OPのようなものが始まる。
「この物語は~」と特撮でありがちなナレーションで画面は特撮モノ、しかし説明される世界観はこのアニメ自体のもの。うまく錯覚させて自然と世界観説明を入れている。
そしてこのアニメ内作品のOPがこのアニメの特殊OPとなっている。面白い演出だ。
ちなみにここで登場する「ふるさとヒロイン特例法案」という言葉の詳しい説明は公式サイトで紹介されているので引用しておく。
ふるさとヒロイン特例法案【ふるさとひろいんとくれいほうあん】
地方創生のため、全国の自治体に「ふるさとヒロイン」のプロデュースを国が援助する法案。
世間では「ご当地ヒロイン」という名称が一般的だが、
政府は「ふるさとヒロイン」の名称を採用した。
Aパート
特殊OP後、街の風景。のどかな地方都市だ。
放課後になりショーへと急ぐ中、二人の少女がぶつかる。赤来杏と黄瀬美甘。
杏は常識外れなヒーローアクションを見せる。
杏と入れ違いに車で登場するもう一人の少女、紫村果音。杏を探していて、彼女に対する異常なまでの怒りを初見の美甘にぶつける。
そして美甘のこの顔芸。
ギャグを入れつつ、杏が体操選手であるという補足をすぐに入れることで、異質な行動・キャラクターへのストレスがかなり軽減されるため、見やすい。
そこに登場するまた別な少女二人。城ヶ根御前と黒酒路子。
生徒会長と副会長というまたベタで分かりやすい設定。
ショー会場へ急ぐ杏と妹の柚香を連れ出かける美甘。
二人とも一度帰宅し私服になっている。美甘は自転車で向かったため、走ってきた杏と再会するのである。
この時、仮面を後ろ頭につけ、特撮の変身シーンさながら宙返りする杏は、一瞬カミダイオーに見える。
一方、市民ホールのような会場で行われる地域行事。客がほとんどいない。
観光大使である御前はそれを見て不満の様子。この町への思いが随分強いようだ。見つめる肖像のおじいちゃんはどんな人物だったのだろうか。
そして正体不明の女性の言葉でハッとする御前…
「火をつけなさい、胸のエンジンに」*1
場面が戻り、美甘がカミダイオーショーの会場へ向かう中、客たちが不満に帰っていく。愕然とする杏。ちーん。
明日は来ないという不吉な言葉通り、主催者の不手際でショーは中止になっていた。
美甘が必死に説明するも、泣き出す妹。
思わずカミダイオーを見せるとあてのない約束をしてしまう。
ご機嫌な妹と「どうしよう…」と焦る美甘の対比がおもしろい。
妹を寝かしつけるも腹にキックを食らいこの表情。美甘の受難と顔芸がギャグとして定着してくる。
妹の言ったセリフを聞いて先ほどの杏の宙返りのシーンを思い出し、翌日カミダイオーを演じてほしいと頼みに家を訪ねる。
杏は二つ返事で快諾。杏の部屋はカミダイオーオタク部屋だった。
「アクションヒロインの話をできて喜ぶ杏」と、「妹を納得させる方法を見つけたことに対して喜ぶ美甘」。
「子供の笑顔のために」と満足な杏と、「ほっぺぽよぽよ」という美甘。
若干の二人の食い違い、温度差の対比が描かれている。
そしてカミダイオーのマネという案を妹の柚香に提案するも、微妙な反応。
ここで美甘たちに課される課題が、柚香に「あのカミダイオーショー」を見せること。
明日からがんばることに…
そして翌日、美甘の前に登場した杏は…
Bパート
目にクマを作り朝までカミダイオー資料をまとめたという杏。やはり温度差が浮き彫りになる。
杏が美甘に教え込む様子がダイジェストシーンで描かれる。
授業中に寝てる杏とマジメな美甘の対比から、やがて美甘も居眠りするという、二人の同調が描かれる。
このシーンの途中で挿入されたシーンがこれ。
今まで杏がどんなアクションをしても見えそうで見えなったが、ここでついにパンチラするのである。
この唐突さ、意外性、達成感は非常に有効なサービスシーンの使い方だ。ちゃんと恥ずかしがってるのも良い。
これを少し集中がゆるみがちなセリフのないダイジェストシーンに持ってくるところが上手い構成だ。
その後、ショー用のSEを用意するためにITに長ける少女、青山元気に会いに行く。ライン音源=CD音源なら位相反転で消せるはずという結構ガチな知識を持つ。
キャラクターを多く出さなければいけない一話で自然と登場させることに成功している。
やがて会場で練習する二人。美甘はチア部だったがアガリ症で引っ込み思案のため辞めてしまったという。敵役としてアクションを寸止めされる役に。
一方御前は町おこしキャラを考えるも行き詰っている様子。
そんな中カミダイオーのアクションシーンをこなす二人を見つける。二人のアクションに驚愕する。
その後も二人の準備は続く。手作りの小道具。ボロボロの美甘の体。
それを柚香はこっそり見ていた…
そのせいか本番当日もどこか気が乗らない様子。
ショーが始まり、敵役として美甘が登場するも、拙い小道具を笑われてしまう始末。
妹である柚香はたまらない気持ちで見ているだろう。
しかしここでカミダイオーに扮した杏が登場し、アクロバティックなアクションを見せる。
子供たちは驚き興奮する。「空気が変わった…!」
だがその後の戦闘アクションで、
杏は寸止めするはずの攻撃を、ことごとく美甘に当ててしまう。痛がる美甘。
しかしこのアクションによって無邪気な子供たちは一層興奮する。
ただ一人、妹を除いて。
姉が痛めつけられるのを見て柚香は心配になる。
やがて重い一撃をまともに食らい、ついに美甘も限界かと思われたその時、
立ち上がったのは妹だった。
柚香は、ずっとカミダイオーというテレビ内のヒロインが好きで、そのカミダイオーを応援するためにショーに行きたがっていた。
柚香が見たがった「あのカミダイオーショー」とはそういうものだったはずだ。
しかし、このとき柚香は「がんばれええっ!おねえちゃん!!」と美甘の演じる敵役を応援したのだ。
ここが一話の最大のカタルシスポイントである。
柚香は、カミダイオーという単なるマジョリティ的ヒーローではなく、姉の美甘という自分の真のヒーローを応援するという成長をし、
本来の「あのカミダイオーショー」でなくとも駄々をこねず応援したのだ。
そのことで美甘も、妹をただ見守る存在から、ショーの中で妹に応援される存在へと変わったのだ。
それによって美甘は立ちとどまった。
その後もウルトラマンVSシーボーズのごときアクションを繰り広げ、
最後に一撃必殺の飛び降り蹴り。杏は練習よりも高い位置から飛び降りる。
このアクションが決まり、ついにカミダイオーが勝利すると、決めポーズとともに子供たちも大喜び。柚香も「やった~カミダイオ~」とはしゃぐ。
柚香が喜ぶシーンは2回映るが、2回目は何を言っているか聞こえない。
しかし、先ほどのシーンから考えればなんとなく予想がつくのである。
ここで突然、さきほど飛び降りに使ったやぐらが豪快に崩壊する。
練習より高い場所から飛び降りたことが原因ではないか、と焦る二人。
家に帰るもこの件がTVニュースになっており、ネット上に自分たちの動画も公開され、焦燥しきった二人。「おわった…」
そして放課後、生徒会室に呼び出され青春終了を覚悟するも…
伝えられたのはお咎めなし。理由はあの程度でやぐらが倒壊するのはそれ自体が建設上の問題だというものだった。
これは常識的な判断だが、ある種のバイアスによって「何か罰を受けるのではないか」と、登場人物や視聴者は思いがちである。それをうまくミスリードに利用した展開だ。
結果、むしろ大きな事故を未然に防いだとし、ネットで話題になっている今の勢いに乗ろうと、御前は二人に陽菜野市アクションプロジェクトという話を持ち掛ける。
それはつまり、美甘と杏がアクションヒロインになって陽菜野市の低迷を「打ち壊す」という提案だった…
ちなみに次回予告…
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!悪を倒せと、あたしを呼ぶ!」*2
「こいつはすごいぜ!」*3
第一話から考えるチアフルーツの魅力
まずこのアニメの魅力となりうる一つは、キャラクターだ。
それぞれ分かりやすい性格で、印象に残る。
そしてキャラクターデザインもかなり可愛い。表情がギャグを含めて大げさに変わるのもポイントだ。
そして一番の魅力は、脚本の出来だ。
伏線を張っては回収するというシーケンスを繰り返すことで、テンポがよく見やすさが生まれている。最初から最後まで話が全てつながっており、この第一話の完成度は相当高い。
またショーの中止、失敗する寸止め、崩壊するやぐらといった、
事件が発生してはそれを解決する、またはミスリードとして使うという流れでのテンションの維持が上手い。これによって視聴者は飽きることなく最後まで見続けられる。
そして妹の心情変化など、話自体の面白さに関わる重要なプロットがよくできていると感じた。
今後もこのキャラクターたちの作画と、第一話のような脚本が維持できれば*4とても良い作品になることは間違いない。今後に期待したい。